『安彦良和 マイ・バック・ページズ』発売!
前回の更新からまたまた半年ほど時間が空いて、気が付けば11月も後半となってしまいました。コロナ禍の中ですが、こちらのブログでもお伝えしてきた、ひとつの目的がようやく達成できたので、改めてご報告したいと思います。
太田出版の雑誌『CONTINUE』にて2018年7月から2019年11月までの約1年半、9回にわたって、アニメ監督であり漫画家である安彦良和さんのこれまでの仕事を語ってもらう形で進めてきたインタビュー連載『安彦良和 マイ・バック・ページズ』が、連載終了から1年を経て、ようやく単行本化されました。
当初は連載終了後から時間を空けずに単行本化を行う予定でしたが、思いの他時間がかかってしまいました。連載時は、取り上げる作品に関してはあらすじなど一切載せず、一問一答という形で進めていたため、悪い言い方をすると「とても不親切かつ乱暴」な構成となっていました。
一応、最低限理解できるレベルでまとめてはいたのですが、それをそのまま単行本化するのは、さすがに不親切すぎるし、筆者の質問の意図なども伝わり難いだろうということで、インタビューのバックグラウンドとして知っておいて欲しい、作品のあらすじ、時代背景、そして作品成立に対して語ってもらうための質問の意図などを前面的に書き加えることにしました。
また、連載時には掲載しきれずにこぼれてしまった話、かつて筆者が別のインタビューで安彦さんから聞いた話、そして連載1回分と同じくらいの時間を割いた追加取材などの要素を加えることで、テキスト量は連載時の倍程度に膨れあがってしまいました。連載時も一応は時系列で話を聞いていたのですが、それでも入れ替わったり、まとめていたりした流れも入れ替え、読み手が理解しやすい時系列に整理。その作業量は当然ながらとてつもなく膨大に膨れ上がりました。
コロナ禍で仕事が減っていたといたのですが、そうした時間を執筆に充てながらも、年始頃にスタートした執筆の第1稿が終わったのは、9月前半。ページ数は500ページを越えることに。
やや荒い状態の第1稿を安彦さんに送ってチェックしてもらい、その戻りをもとに修正を加えた第2稿を作成。そこからさらに精度を高めるべく2回の校正を経ているので、執筆を加えると5回自分の原稿を読み返してたことなる……と、単行本化の作業はこれくらい手のかかるものです。
それと並行する形で、安彦さんには夏頃に行った追加取材の際に、表紙の描き下ろしをお願いしました。安彦さんの作業量が増えてしまうことを考慮しながら、「安彦さんの作品を代表する、マンガやアニメのキャラクターが5〜6人集合したようなイメージのイラストを描いて欲しい」と依頼。
下描きの完成を待つことひと月半くらい経つた頃、編集部にイラストの下描きがFAXにて届きました。そこには、30人を越えるキャラクターたちの姿……。さすがに驚きつつ、こちらの書いた原稿を読んだ安彦さんが、内容に見合う形で投げ返してくれた答えがイラストになったのだろうと思いました。その後、描き忘れていたキャラなどが追加され、合計40人以上が描かれた、まさに安彦さんの全作品を振り返るに相応しいイラストとして完成しました。
キャラクターが集合しながらも、地に塗られた暖かみのあるオレンジの背景色と相まって、温もりを感じるようなイラストになっていて、書籍の顔としてはこちらが臨んだものの300%増しくらいのものとなっていました。
完成したばかりの原画を間近で見せていただいたんですが、その美しさと暖かな感じには本当に感動しました。下の写真は、僕が原画を撮影したものです。印刷された表紙もかなり綺麗ですが、やはり原画には凄いパワーを感じます。
いつか、何かの機会では原画を展示し、みなさんにも直接見てもらえればと思っています。
ちなみに、人数が多くなったことに対して安彦さんに尋ねたところ「“誰を残して、誰を削るか?”と優先順位を付けると考えるのが大変だったから、開き直って全員描いた」とのこと。そのパワーには恐れ入りました(笑)。
そんな苦労をして出来上がった本なので、本当であれば安彦さんのサイン会なども開きたいところでしたが、これもコロナ禍ということで実現が難しい……。ということで、全国の丸善ジュンク堂で、先着順でサイン本が購入できるという形をとりました。その数はなんと約1000冊!
刷り上がったばかりの本を積み上げ、丸一日をかけてサインをしていただきました。ちなみに、自分が関わった本がこれだけ積み上げられる状況を見ることもないので、なかなかに壮観でした。
石井は安彦さんがサインをしやすいように本を並べ、移動するという作業でサポートしながら、サイン中の話し相手を務めました(つまりは、ただのお手伝いですw)。ちなみに、これだけの数のサインをこなしながら、ミスをしたのはわずか1冊のみ。どうしてもリカバーできなかった本に何やら描き込んでいた安彦さんは「これは、石井さんが貰って」と手渡してくれました。それがこちら。
失敗して照れた自画像が描かれた、失敗をリカバーしたサイン本もいい思い出です。
というわけで、企画を開始から約3年半をかけて、これまで手掛けた本の中でも、最も全身全霊を込めた本ができあがりました。
安彦さんと表紙に名前が並ぶというのは、本当に誇れることであり、一方で凄い重みも感じています。ぜひ手に取っていただき、感想などを聞かせてもらえると嬉しいです。
そして、すでに手に取っていただいたみなさん、ありがとうございます! 今後もプロモーションという形で、もうちょっと何かお届けできればと思っておりますので、続報などをお待ちいただければと。
それでは、引き続きよろしくお願いいたします。