機奇械怪@BLOG

フリーライター・石井誠のブログです

1/35 M4A3E8 シャーマン”イージーエイト” 製作記

どうも、今回は珍しく趣味だけの日記です。

 

趣味的に参加している模型サークル「上井草模型倶楽部」の春の展示会が4月19日に開催されました。

この展示会は、上井草にある某アニメ制作会社の方が発起人となって、2010年の春からスタート。春と秋の年に2回展示会を行っているんですが、気がつけば今回が11回目となりました。

自分はというと、「こんなサークルやりたいんですけど、どう思います?」という軽い相談をされたのをきっかけに、「面白そうですね!」と第1回から参加。2011年の秋だけNYコミコンに行ったために欠席しただけなので、10回参加していることになります。

 

主旨としては、「人に見せる機会でもないと、模型なんていつまでも完成しないよね?」というもので、要は「夏休みの宿題を提出させる日を作ろう」というレベルのサークルなわけです。ジャンルを決めるわけでもなく、ただ好きな模型的なものの完成品を持ち寄って、見せ合って模型話をするというだけなんですが、それだけでも模型制作には大きなモチベーションになるんですね。

サークルとしては、これ以上ないほどユルユルなんですが、個人的にはすごく楽しくて、「この展示会でみんなに見せたい」という思いが、模型趣味の大きな原動力のひとつになっているとも言えます。

 

てなわけで、今回もばっちりと完成品を展示してきました。

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今回の作品は、タミヤのM4A3E8シャーマン”イージーエイト”です。

このアイテムは、タミヤから「ノルマンディー上陸作戦70周年」を記念して2014年6月に発売されたアイテム。とは言え、戦車本体は元タミヤの社員の方が創設した中小模型メーカーのアスカモデルから出ているものに、タミヤ製のフィギュアを付属させ、タミヤブランドとしてリリースしたもの。

元から、アメリカ主力戦車のシャーマンが好きで、第二次大戦時における最終進化形ともいえるこのE8型はわりと気に入っていたのもあって、キットは発売直後に入手してすぐに作り始めました(つまり、制作スタートは2014年6月ですねw)。

 

で、作り始めた矢先に、昨年末に公開となったブラッド・ピット主演の戦争映画『FURY』の特報予告が発表となったわけです。それも、乗り込む車両はシャーマンE8型というw なので、もちろん『FURY』の予告映像は制作において大きくモチベーションになったのですが、当然ながら手元には何の資料もなく、予告でチラ映りする姿に「おお、早く観たいな」という思いを馳せつつ、でも劇中のFURY号を作るつもりは毛頭ないまま作業を続けていた……というのが、制作までの流れです。

途中で映画の公開もあり、仕上がりに関しては大きな指針にもなりました。汚れ方とかスクリーンで実物が動いていれば、参考になる部分がいっぱいあるわけですよ。

でも、個人的にはFURY号を作ろうとは思いませんでした。車輌を特定しちゃうと、そこに縛られて自由にやれないように感じたからです。

てなわけで、あくまで「FURY風」的なニュアンスで、もしかしたら近くの戦線にいたかもしれないというイメージで作っていますので、そうした目で見てもらえるといいかと。

 

模型に関しては、いつもは完成した写真だけを載せることが多いのですが、今回はTwitter用に制作しながら多数の写真を撮っていたので、それをもとに簡単に制作の手順を紹介しようかと思います。

そして、あくまで手順であるので、作り方であったり、具体的な色などに関しては表記していませんので、ご了承ください。

一応、模型素人の方も読むかもしれないので、可能な限り専門用語にはフォローを入れていますが、判らなかったググってくださいw

 

●基本工作

 

僕はプラモを改造し始めると完成する気がしないので、基本はほぼ無改造です。とは言え、再現されていない箇所に手を加えるなどの処理はしています。

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本体の基本工作が終わったら、成形の都合で省略されている溶接ディテール(車体の角の白い筋ですね)を伸ばしランナーを貼り付け、ヒートペンで溶接跡を加えています。

砲塔部分は鋳造なのですが、そこもディテールがちょっと緩いのでシタデル社のリキッドグリーンスタッフ(水性の溶きパテ)で鋳造表現を加えます。

砲身はパッションモデルの金属砲身、牽引ワイヤーは海外メーカーのものを使用しています。

荷物類をたくさん載せたかったので、海外メーカーのレジェンドモデルの「シャーマン荷物セット」(レジン製)とタミヤの連合軍車輌アクセサリーセットを使い、車体にフィットするように調整しながら取り付けました。固定用のベルトは釣り用の板鉛(極薄のもの)で再現しています。

車体両脇の追加装甲的に取り付ける木材は、実際の車輌を参考に針金で束ね、手芸用の糸をロープとして使ってぶら下げました。

あとはペリスコープやライトなどを事前にマスキングした程度で特に何もしていません……が、やはりこの荷物の取り付けに最も時間をとられているかもですね。

 

●塗装開始

金属パーツ、レジンパーツとプラ以外の素材をたくさん使っているので、塗料の食いつきを良くするのに下地塗装としてサフェーサーを吹いています(エッチングパーツや砲身などの金属パーツ部分のみ、メタルプライマーを先に塗っています)。

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下地処理が完了した状態。これで、塗装準備が完了です。

 

●基本塗装

今回は、米軍の制式の色であるオリーブドラブの単色迷彩なので、単調にならないように「カラーモジュレーション」塗装をすることにしました。「カラーモジュレーション」については、いろいろ細かい理屈があるんですが、説明していると長くなるので省略w

要は、光の当たる場所を極端に見せることで陰影が付いているように見える技法です。

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これがカラーモジュレーションを終えた状態。

塗り方としては、基本色よりも暗い影色を車体の影になる奥まった部分を中心に塗ります。

次に、基本色を塗っていきます。光が当たる部分を中心にやや大きめに影色を残して塗りるのがポイントです。

そして、さらに基本色よりもちょっと明るい色をさらに光のあたる部分を強調するように塗装します。

最後にハイライトとなる色を最も光の当たる部分(天面など)を中心に塗り、ボルトや突起物にもハイライト色を乗せます。この後、どんどん汚れていくので、「こんなに明るくして大丈夫?」くらいな塗りになっています(写真はそんなに明るく見えないですが、実際はかなり明るい色です)

ということで、一見1色に見えますが、実際は4色くらい重ねているということですね。ちなみに、当然ながらエアブラシを使って塗装しています。

 

 

●汚し塗装

実は、ここまでが本当に基本の基本。ここからが時間をかけるところだったりします。

 

・フィルタリング

まずはフィルタリングです。カラーモジュレーション塗装の塗面にフィルター用の塗料を塗ることで、グラデーションが落ち着きます。面によって2〜3色のフィルター塗装をすることで、色にちょっとした深みが出ます。ちなみにフィルター塗装とは、色が薄く溶いてある特殊塗料を使ってコーティングするように塗ることでその名前の通り、塗料にフィルターをかけるような効果があります。

 

・ピンウォッシュ

所謂スミ入れ塗装です。ピンポイントでウォッシュするからピンウォッシュと言うそうです。ちなみにスミ入れと言っても、ディテールに汚れが溜まってそこが黒っぽく見えているわけで、本当の黒でやったりはしません。ダークブラウンのピンウォッシュ塗料を使ってディテールを強調させます。

 

ストレーキング

ストレーキングは、雨だれなどでできた縦縞の水汚れを再現するテクニックです。戦車などのツヤがない塗面は凹凸が多いので、雨だれ跡が残りやすいんですね。雨だれは、ストレーキング用の塗料や油絵の具で実際に汚れが残りそうなところ(例えばボルトやハッチの下など)の汚れをともなって下に向かって流れることを考えて縦縞を入れて、それを溶剤でぼやかして調整します。もちろん、本物の戦車の写真なんかを参考にしつつ雨だれを再現していきます。

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上記の作業をすることで、使い古された感じが出たかと。

汚し塗装をしつつ、荷物も塗装していきます。荷物類はアクリル塗料を使って筆で塗っています。荷物類は布製だったりするので、影色を塗り、次に基本色、そしてハイライトと陰影を気にしながら鋼鉄製の本体とは素材の違いを出すようにします。

木材は濃い茶色で基本色を塗り、そこにいろんなグレーでドライブラシ塗装をしてリアル感が出るように調整しています。

 

●チッピング

チッピングとは、傷を付けることです。とは言っても、実際に傷を付けても地のグレー出てくるだけなので、傷は実際に細い筆で描き込んでいきます。傷は2段階に考えていて、浅い傷は基本塗装が白っぽく変色、深い傷は下地の鋼鉄が出てしまうという表現です。

まず、浅い傷を全体に描いていきます。もちろん、傷がつきやすいハッチの端やエッジ部分、乗員が乗り降りする際に足をかけるとか、荷物の乗せ下ろしに使うとか、そうした「使う場所」を想定して手を入れます。さらに、弾が飛んできて当たった場所とか、爆風で飛んできた石が当たったとか、そうした「不慮の傷」もランダムに着けて行きます。

こちらは、白っぽいオリーブドラブ系の色を使いました。

次に、より深い傷になったところを描いていきます。これは、浅い傷の中に濃いめの茶色で傷を描くのですが、より細かい作業になります。主に装甲の端やフックの先端など塗装もどんどんハゲていくところを中心に作業を進めます。

ちょっと細かくて大変そうですが、でも「こうして付いた傷なんだよね」という想像が楽しいです。

ちなみに、傷表現は下地の色を塗ってその上にヘアスプレーを一度塗り、さらに本体色を塗って実際に塗装を剥がす「ヘアスプレー技法」やスポンジに傷色をつけてスタンプするように傷をつける方法など、いろいろ試してみたんですが、自分で描くことが最もコントロールしやすいという結論に達しました。状況によってはヘアスプレーもスポンジも有効なので、今回もちょっと使っています。

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●土&ホコリ汚れの追加

これにて本体の塗装がだいたい終了となるので、ここに土やら埃の汚れを追加していきます。土や埃は、ピグメント(デッサンとかに使うパステルを粉にしたようなもの)と塗ると泥や埃が溜まったような仕上がりになるウェザリングカラーという塗料を使います。

ピグメントは水やアクリル塗料用の溶剤で溶いて泥上にして転輪や履帯、その周辺の本体にランダムかつ不自然にならないように塗りつけます。

また、乗員の乗り降りで靴の泥が着くところや、埃が溜まるところなどの表現にももちろんこだわります。

入り組んだところなどはウェザリングカラーを使ったり、粉状のピグメントを擦りつけて定着液を垂らして落ちないようにしたりと、これまた結構手がかかります。

 

ピグメントの色も数種類使うことで、リアリティが出てくるので個人的には欠かせないマテリアルなのですが、作業後にピグメントの粉で机が汚れたりするので注意が必要かと。

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ちなみに、履帯はキットのものが微妙に使い難かったので、トランペッターの可動履帯に変更しています。

さらに、機銃や履帯、起動輪の端っこはガンメタルでドライブラシで使われている金属感を出しています。

 

で、最後に溶いたピグメントをコシの強い筆で弾いて泥ハネを再現。

そんなこんなで完成です。

 

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ちなみに、作り始める前に本体内部にナットを固定してあるので、それを使ってベースにボルトで固定してあります。

さらに、展示会先に輸送もしなくちゃならないので、ベース自体も輸送用のケース(100円ショップのDVD保存ケース)に固定できるようにしてあります。

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本当は、フィギュアを3体載せる予定だったんですが、展示会には間に合わずw

現在はフィギュアを制作しております。

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というわけで、今回は完全に趣味寄りのブログでした。

ここまで付き合っていただけた方には、趣味的にわりとこだわって模型を作っているのが判ってもらえたかと思います。

こんなことを仕事の合間にやっていると、1体作るのに半年くらいかかってしまうわけですね。それでも、展示会があるからこそこうして完成にこぎつけることができています。

そういうわけで、春の展示会は終わったばかりですが、次回の秋の展示会に向けての戦いは始まっておりますw

次は10月予定ですので、興味がある方は展示会を見に来ていただければと思います。

詳しくは、下記のサイトでチェックしてくださいませ!

 

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