機奇械怪@BLOG

フリーライター・石井誠のブログです

『FURY』公開!

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どうも、1カ月のご無沙汰です。

10月後半あたりから年末年始を睨んだお仕事が動くはじめる時期で、わりと真面目に働いていたせいか、趣味的なことはあんまりやれていない感じです。

そして、12月に入ると年末進行が始まって、いろいろと作業を先倒ししなくちゃならず忙しかったりします。

てなわけで、映画なんかも全然観に行っていないんですが、個人的に楽しみにしていた映画が公開されたので、それについてちょっとだけ書きます。

 

楽しみにしていた映画というのは、ブラッド・ピット主演の戦争映画『FURY』。

去年ティーザーポスターが公開されて、「ブラピが戦車乗り役で戦車映画が作られる」と話題になってからずーっと楽しみにしていたんですね。そして、今年の初夏頃に予告編が公開されて、かなり戦車戦がちゃんと描かれると判ってからは、まわりのミリタリーに理解のある人たちにも「シャーマンが! ティーガーIが!」と言ってネタ振りしまくっていました。

ずっと戦車好きを公言してきていますが、僕自身は戦車の中ではアメリカ軍のシャーマン中戦車が大好きなんです。

今から約10年前に共著で出版した『機動戦士ガンダム/ハチゼロ/ハチサン/ゼロハチ』(太田出版・絶版)という書籍では、メカデザイナー山根公利さんにインタビューをし、その場でシャーマンの話題で盛り上がって、表紙用に描き下ろしてもらったガンダムEz-8のイラストを発注する際にも「シャーマン的なディテールが入ると面白いですよね」なんてことを言ったりしていたほどです。

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↑だから、このイラストにはシャーマン的なディテールが入っています(笑)。

 

そんな僕ですから、当然ながらブラピがシャーマンイージーエイトに乗る映画と聞けば、大人しくしていられるわけはありません。

映画に関しては、早々に試写で拝見することができまして、その感想を……となるわけですが、とは言え普通に映画評をすると自分の「戦争観」的な部分にも踏み込んでしまって長くなりそうなので、今回はむしろ映画のどの部分を楽しんだのかを書いて行ければと思います。

 

まず、この映画で外せないのは実際の戦車で撮影した映像であること。撮影が行われたのは、かつてイギリス軍の戦車学校があった場所に建てられている「ボービントン戦車博物館」の近く。ここは、戦車学校があったところなので、広大な敷地があって、さらに博物館で所有する実働する戦車を撮影するには好都合だったんですね。

そして、当然ながら映画には実際に第二次世界大戦で使用されたシャーマン中戦車をはじめとした車輌を、本当に動かして撮影されているんです。まさに本物!

本物の戦車を使い、1輌の戦車には何人のクルーが乗って、どんな役割分担をして戦車を動かすのか? 『ガールズアンドパンツァー』のおかげで、戦車クルーに関しての知識は広く伝わっているんですが、実は映画ではそうした戦車クルーの役割分担について、ちゃんと描かれている映画というのがほとんど存在しないんです。

それにはちゃんと理由があって、戦車の車内を撮影することが不可能であるからなんですね。戦車の車内は狭く、カメラを持ち込んでもその全容をちゃんと見せることができないわけです。そこで、『FURY』では車内を撮影するためのカットモデル的なリアルな車輌セットを作って撮影することで、線車内で戦うクルーたちの緊張感あふれる映像を作り上げることができ、より戦車乗りの実像を描くことに成功しているわけです。

本物の車輌に関してもうひとつ外せないのが、劇中に敵戦車として登場するドイツ軍のティーガーI重戦車。その姿と強さから、世界で最もメジャーな戦車と言えるティーガーIですが、敗戦国の車輌ということもあって、現在世界中に6輌しか現存していないんです。そして、その6輌の中で、ちゃんと動く車輌というのはたったの1輌。それが、撮影が行われたボービントン戦車博物館が所蔵するティーガーI重戦車なんですね。

これまでいろんな戦争映画にティーガーIは登場しているんですが、その全てが既存の戦車やトラックをセットのように外壁を取り付けて作ったものばかり。ボービントン戦車博物館のティーガーIも長年をかけて修理し、2006年にようやく走れるようになったレベルなので仕方ないのですが、映像に本物のティーガーIが出ているとすれば、それは記録映像を転用したものでしかなかったんです。

それが、今回の『FURY』では実働可能な唯一のティーガーIを実際に走行させて撮影しているんですね。つまり、戦車ファンにとってはそれだけでも貴重な映像なわけですよ。

劇中では、ブラピたちが乗るFURY号をはじめとした戦車の音を聞き慣れた後に、ティーガーIが登場するわけですが、最強戦車は駆動音からして並の戦車とは違うことを体感させてくれます。

そんな本物にこだわった戦車は、画面に現れるディテールももちろん本物なわけです。FURY号が所属する第2機甲師団は、長期間にわたってアフリカらからヨーロッパを転戦してきたという背景があるんですが、多分何度も部隊は再編成や車輌の交換を繰り返してきたんでしょう。共に行動する車輌は統一されておらず、まさにシャーマンバリエーションを楽しめるような編成になっているんですね。

ちなみに、時期的な部分と符合させると、FURY号は二次大戦の後期に配備されたM4A3E8(劇中ではM4A2E8ですが)なので、それまで乗っていた車輌が壊れて、新たに受領したものなのかなと思います。その他の車輌も、M4、M4A1、M4A2と違う車輌で編成されているので、横並びになったシーンを見ると車体や砲塔、サスペンションのなどの微妙な違いが判って、たまらん感じだったりするんですね。

 

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その他にも、知識としては知っていた戦車のギミックや装備、さらには弱点や破壊のされ方まで、まさに「フルギミック」で見せつけてくれるので、いろいろと腑に落ちまくる映画に仕上がっているわけです。

映画自体は、決して明るい映画ではないんですが、そうしたディテールのこだわりが効果的な演出につながる戦争の現実を描いて、大満足な作品となっていました。

個人的には、戦車を体感するためにはいい音響で観るべきだと思いますので、ぜひ劇場の大きいスクリーンと立体音響で戦車の厳しい戦場を体感してほしいです。

 

そして、当然ながらシャーマン中戦車(M4A3E8)のプラモデルも鋭意製作中。自分の場合は、FURY号の再現にはあんまり興味がなくて、この映画でインスパイアされたイメージをもとに、別の車輌として製作しています。経過については、またブログで紹介できればと思います。

 

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●今月のお仕事

 

ガンダムエース1月号(角川書店

池田秀一さんの対談式コラム「シャア専用雑記」は、シャア専用オーリスの試乗の感想とクルマに関する思いを語ってもらっています。

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ハイパーホビー1月号(徳間書店

TNGパトレイバー』では、田口清隆監督のインタビューをしています。その他、スターウォーズのグッズページなども担当しています。

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そして、『データカードダス ディスク・ウォーズ:アベンジャーズ 魂ロワイヤル』の第3弾のアメイジングレアカードも公開。

このカードは企画から関わっていたので、ようやく発表になって嬉しいです。

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●G get press No.155

レンタルビデオショップ・ゲオのフリーペーパーの最新号では、ゲーム特集を担当しています。

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機動戦士ガンダム THE ORIGIN関連

劇場で配布されているチラシで、一部原稿を担当しました。カッコイイメインビジュアルが描かれてますので、ぜひ手に入れてください。

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公式サイト(http://www.gundam-the-origin.net/)では、音楽を担当した服部隆之さんのインタビューが公開となっています。

 

●ヴィレッジブックスアメリカンコミックスオフィシャルサイト


villagebooks AMERICAN COMICS

 

・海外マンガフェスタトークイベントレポート(ビリー・タン氏、ジム・リー氏)

アストロシティ:ライフ・イン・ザビックシティ レビュー

キャプテン・アメリカ:リボーン レビュー

上記が公開されています。

 

●『「ガンダム」白書』(宝島社)

以前原稿を書かせていただいた『僕たちの「ガンダム」ランキング』の合本再版版が発売となっています。

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ガンダムパーフェクトファイル

No.153号(ビグ・ラング担当)

No.155号(陸戦強襲型ガンタンク担当)

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